研究概要 |
本年度は、個人所有の庭の緑が地域へもたらす効果について、都市住民の緑に対する意識構造を調べた。また、緑による地域への貢献に対する意識を規定する要因として、環境や地域へのかかわり方、社会に対する考え方を取り上げ、それらの影響を検討した。 戸建て住宅を対象とした社会調査の結果、庭の緑の効果について、住民は効果が及ぶ地域範囲の広狭の違いを認識していることが示された。緑の機能については目然環境と生活環境という環境の利用目的の違い、生活環境に関しては、「ゆとり」、「快適性」、「安全性」の階層の違いを認識していると考えられた。また、自然への関心や緑の入れ等の環境へのかかわりと地域への愛着や近所づきあい等の地域へのかかわりが高い人ほど,庭の緑が地域へ貢献するとの考えを持つ傾向があり、社会に対する考え方においては、協調性や献身性等の考え方が地域への貢献意識に寄与していることが明らかとなった。 以上より、地域範囲や環境の利用目的を考慮した緑政策が必要であり、緑や環境向上への取り組みを地域ぐるみで行い、コミュニティの向上も合わせて取り組むことが必要と考えられた。近年、都市環境アメニティの向上に加え、緑による都市ヒートアイランド緩和が期待されてきているが、本研究の結果は、小規模の緑の集積が、地域や都市全体の緑へ貢献するための施策へ向け、地域範囲、利用目的、といった具体的方策への知見を得られたものと考えられる。
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