将来的に環境や人体に配慮した生物農薬の開発を目的とし、その中で、モンシロチョウが寄主植物であるアブラナ科植物を特異的に探索・産卵する要因が揮発性成分であることから、モンシロチョウの寄主選好強度は、種類(品目)によって差があることが考えられる。また、この寄主選好の差は、各品目の放出する揮発性成分の組成や放出量の違いによるもの考えられ、ここでは5品目(キャベツ、ダイコン、ハクサイ、ブロッコリー、カラシナ)のアブラナ科野菜の揮発性成分を分析するとともに、各品目へのモンシロチョウの飛来選好強度を計測するとともに、アブラナ科植物共通のモンシロチョウメス成虫誘引成分を推定した。供試植物5種に対するモンシロチョウメス成虫選好性において、キャベツを対照植物として選好実験を行ったところ、メス成虫は、他の4種アブラナ科植物よりもキャベツを有意に選好し、同様の組み合わせ選好実験を行い、モンシロチョウメス成虫の選好性は、キャベツ>カラシナ>ハクサイ>ダイコン>ブロッコリーの順となることが判明した。次に、供試植物5種の共通揮発性成分は、11成分検出され、isopropyl alcohol、Z-3-hexenyl acetate、o-menthan-8-olの3成分が最も高く選好したキャベツに多く含まれている成分であり、誘引成分の候補となると推定された。また、5種のアブラナ科植物の特有揮発性成分総濃度に大きな差は認められなかったものの、特有成分数および濃度はキャベツでもっとも多くなった。キャベツ、カラシナ、ハクサイ、ダイコンおよびブロッコリーの特有揮発性成分濃度は、それぞれ16成分、9成分、5成分、15成分および9成分であり、これら化合物が揮発性誘引成分である可能性が示唆された。
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