アントシアニン生合成における配糖化・アシル化などの修飾反応は植物種ごとに異なり、自然界における花色の多様性を生み出している。従って、修飾反応を担う酵素遺伝子の働きを人為的に制御できれば、自然界の花色の多様性を産業上有用な花き類において再現することが可能になる。そこで本研究では、アントシアニンの修飾反応において未だ不明な点が多い、糖転移酵素(GT)、そしてアシル基転移酵素(AT)をコードする遺伝子の単離・解析を行い、それらを用いた代謝工学により、多様な花色をデザインする技術の確立を目指す。今年度はまず、AT酵素活性解析系の確立を行った。植物材料にはロベリアを用い、アントシアニンB環の糖に芳香族アシル基を転移する酵素活性の検出に成功した。また、アントシアニンの3位や5位のアシル基転移酵素をコードすると考えられるcDNAを単離し、大腸菌発現ベクターにクローニングした。これらの酵素活性を確認するとともに、発現の抑制実験のためのベクター構築を行う。次に、チョウマメからクローニングしたアントシアニンB環の修飾を担うGT及びAT遺伝子に翻訳エンハンサーを連結し、花弁特異的プロモーターで発現させるベクターを構築して、キクへの遺伝子導入を行った。B環修飾を担うGT単独を導入して得られた形質転換体では、ほぼ100%の割合で花弁に蓄積しているアントシアニンが配糖化されており、花色の変化も認められた。一方、GTとATを同時に遺伝子導入して得られた形質転換体では、アシル化されたアントシアニンを蓄積した形質転換体は得られなかった。今後、得られた形質転換体の解析をさらに行うとともに、B環修飾を担うATの異種植物での発現に向けての検討を行う。
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