花弁の老化はプログラム細胞死の一種であり、その開始と進行は厳密に制御されている。近年、オートファジーがプログラム細胞死において重要な役割を果たしていることが示唆されている。本年度は、オートファジー誘導に必須であるATG8のホモログの一つであるInATG8fとGFPの融合タンパク質を発現させた形質転換アサガオ系統(GF1)を作出し、花弁老化時におけるオートファジー誘導について解析した。GF1系統の開花後8時間の花弁から調製したプロトプラストを蛍光顕微鏡下で観察した結果、主に細胞質にGFPのシグナルが検出された。また、オートファジー構造物を染色することが示されているモノダンシルカダベリン(MDC)の染色パターンと比較した結果、GFPシグナルと染色パターンが一致していた。これらの結果は、花弁細胞においてもオートファゴソームが形成され、オートファジーが誘導されることを確認するものである。 InATG8fの発現抑制形質転換体(InATG8f-RNAi系統)について解析した結果、形質転換体では花弁の老化に有意な変化は認められず、オートファジー活性も低下していなかった。InATG8f-RNAi系統では、InATG8fの発現は抑制されていたが、他のInATG8遺伝子ファミリーメンバーの発現は抑制されていなかった。これらの結果から、花弁老化時のオートファジーの誘導には複数のInATG8ホモログが関与し、それらのいくつかは重複した機能をもっていると推察された。
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