本研究はイネ免疫システムを制御しているOsRac1が複合体として存在しているか、存在しているならどのような動態を示すのかを明らかにするために行っている。 生化学的手法ゲルろ過による分子量分画実験を行ったところ、OsRac1が活性化状であれば不活性状態の時と比べると大きな複合体中に存在することを明らかにすることができた。また免疫応答を誘導する物質エリシターの刺激によってもOsRac1が大きな複合体中にシフトすることを明らかにした。さらに興味深いことに、この現象は刺激後3~10分といった免疫応答初期段階でのみ確認され、30分以降だと不活性状態時の大きさに戻ることが分かった。これらの結果からOsRac1が活性化状態にのみ大きな複合体として存在しており、免疫システムを制御し、過剰な免疫応答を示さないために一定の時間が経過した後には不活性化状態の複合体に戻ることが示された。また刺激後3~10分の際にはOsRac1が脂質ラフトと呼ばれる膜画分に局在することを明らかにしたので、この画分とOsRac1複合体との関与を示すことができたといえる。 複合体を構成する因子の解析については、これまでOsRac1との相互作用が知られていたもののうち4つがOsRac1複合体に存在することを確認することができた。これら複合体形成因子はOsRac1の活性化、不活性に関わらずその大きさに変化がみられないことから、免疫応答時にはOsRac1がこれら複合体形成因子たちと相互作用することで大きな複合体へのシフトを行っていることが示唆された。
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