研究概要 |
難防除である土壌伝染性病害の根こぶ病、黄化病などの攻撃に対するハクサイの根部および地上部の防御応答を、モデル実験植物の情報を利用しつつ、代表者が整備したハクサイゲノムリソースと、これを用いたハクサイマイクロアレイ解析により明らかにし、根部における病害防御応答を中心に重要遺伝子および、マーカー遺伝子を得、その機能解析を行った。約5,000の完全長cDNAクローンを含む8KハクサイcDNAマイクロアレイを構築した。本アレイを用いて、サリチル酸ナトリウム、エテフォン、メチルジャスモン酸、BTH処理に対する遺伝子発現解析を行い、病原菌に対するハクサイの主たる防御シグナル伝達経路であるサリチル酸(SA)、エチレン(ET)およびジャスモン酸(JA)経路に位置するマーカー遺伝子および病害防御応答遺伝子を探索した。まず、ハクサイマイクロアレイ解析による遺伝子発現プロファイルとシロイヌナズナのデータの比較解析を行った。その結果、薬剤処理したシロイヌナズナとハクサイのグローバルな遺伝子発現プロファイルは類似していた。一方、個々のカウンターパート遺伝子においては、両者で同様な発現プロファイルを示すものと、異なる発現プロファイルを示すものが認められた。また、ハクサイのマーカー遺伝子として、SA経路はPR-1、BGL2、ET/JA経路はPOF1.2、JA経路はVSP2、LOX2、AOS遺伝子が同定された。次いで、ハクサイ根ESTライブラリーから抽出した10Kハクサイ根マイクロアレイ(ユニークなクローンは5K)を構築した。土壌伝染性病害である根こぶ病菌を接種したハクサイ抵抗性および感受性品種における根の遺伝子発現を解析した結果、3倍以上の発現を示した遺伝子は抵抗性品種で30遺伝子、感受性品種で21遺伝子であった。また、感受性品種で発現する遺伝子のほとんどは抵抗性品種に含まれ、かつ、強く発現していた。
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