本年度はモデル実験植物シロイヌナズナの地上部および地下部組織における遺伝子発現を網羅的に比較解析するため、各種ストレス処理を行ったESTおよび完全長ライブラリーからcDNAクローンを得、cDNAマイクロアレイを作製した。まず、ハクサイ(京都3号)にストレス処理したESTライブラリーから、独立した約1800のESTクローン、次いで、根こぶ病抵抗性のハクサイ(野茶研より分譲)にストレス処理して完全長cDNAライブラリーを構築し、約2700の独立したハクサイ完全長cDNAクローンを獲得した。さらに、野菜茶業研究所で育成した根こぶ病抵抗性ハクサイ系統の播種後25日目の植物体にストレス処理し、根から抽出したRNAを用いてcDNAライブラリーを作製して、独立した約5300クローンを取得した。以上から、独立した約10000の遺伝子を搭載した10Kハクサイマイクロアレイを構築した。本アレイは根由来の遺伝子が半分を占めているのが特徴である。現在、マイクロアレイ解析を実施し、地上部および地下部において発現(抑制)する遺伝子群を得、防御応答に関わる遺伝子群を解析している。また、マイクロアレイを用いてシロイヌナズナの地上部および地下部のSAおよびエチレン(ET)応答性遺伝子を解析した結果、地上部においてSA経路のマーカー遺伝子として有名なPR-1遺伝子、ET/JA経路のマーカー遺伝子として有名なPDF1.2遺伝子はSAまたはエテフォン処理した植物の地下部での誘導が認められなかった。一方、sibA遺伝子は葉と根の両方でSAにより発現誘導されることが明らかとなった。また、地下部特異的にSAまたはETに応答する遺伝子群が明らかとなった。
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