研究課題
ハクサイにおける有用遺伝子の機能解析を目的として、抵抗性誘導剤や菌の細胞壁成分をハクサイに処理し、8Kまたは10Kハクサイマイクロアレイ解析を実施して地上部および地下部において発現(抑制)する遺伝子群を得、防御応答に関わる遺伝子群を解析した。その結果、抵抗性誘導剤処理についてはマイクロアレイに搭載した遺伝子の約10%の発現プロファイルが変動した。特に、植物ホルモン誘導性遺伝子、ストレス誘導性遺伝子、糖代謝遺伝子が活性化された。一方で光合成関連遺伝子および蛋白質合成、代謝関連遺伝子は発現抑制された。菌の細胞壁成分については防御応答遺伝子の活性化が認められた。根こぶ病を接種したハクサイの遺伝子発現解析により、シロイヌナズナのPR-1と相同性が高いBrPR-1を発見し、本遺伝子を根こぶ病に応答するマーカー遺伝子の候補として抽出できた。ハクサイの根こぶ病抵抗性系統への根こぶ病菌の接種によりBrPR-1の発現誘導が認められたことから、根こぶ病に対する防御応答にSA経路が関与する可能性が示唆された。これまで、絶対寄生菌の攻撃に対して植物はSA経路を活性化して防御応答し病原体の感染を防ぐと考えられている。根こぶ病は絶対寄生菌であることと、本知見により、根こぶ病の防除には宿主植物のSA経路の活性化が重要であることが示唆された。また、ハクサイマイクロアレイ解析より、根こぶ病抵抗性系統の根および葉において発現誘導される遺伝子を同定した。これらは根こぶ病に対する抵抗性の誘導に何らかの関与をしている可能性がある。現在、これら遺伝子をシロイヌナズナに形質転換し、形状、形態およびストレス応答性の違いを詳細に解析している。特に、形質転換体の土壌伝染性病原菌に対する表現型を詳細に解析し、土壌伝染性病原菌の攻撃に対する植物の防御応答機構を明らかにする予定である。
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DNA Research
巻: 18 ページ: 277-289
10.1093/dnares/dsr018
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