1 マーカー遺伝子の選定 宿主特異的毒素のエリシター効果を検証するためには、指標とする病害抵抗性関連遺伝子の選定が必須である。申請時は6種類の遺伝子しか検証していなかったため、今年度にこれまでに当研究室で蓄積してきた22種類のカンキツ病害抵抗性関連遺伝子を用いて、ACT毒素生成菌と非生成菌をラフレモン葉に接種した時における発現挙動の差異を解析した。その結果16種類の遺伝子の発現において毒素非生成菌接種時と比べて差異が認められ、その発現挙動には以下にあげる3パターンあることが明らかとなった。 a) 接種後、発現量が最大になるまでの時間が短い遺伝子。 b) 誘導されるまでの時間は変わらないが誘導される発現量が多い遺伝子。 c) 最大発現量やその時間にそれほど差異はないが、長時間発現誘導されている遺伝子。 さらに、本解析はシグナル伝達経路の上流遺伝子、下流遺伝子の両方を用いて行ったが、どちらの遺伝子群において差異が認められたため、ACT毒素にはかなり広範なエリシター作用がある可能性が示された。現在、選抜した16種類の遺伝子を用いて毒素欠損変異株接種時における発現挙動解析を順次行っている。 2ACT毒素単独処理の検討 ACT毒素単独処理の条件を検討するため、ACT毒素粗抽出画分を感受性品種であるイヨの葉の葉柄に滴下処理し、経時的観察を行った。その結果、毒素による壊死は引き起こせるものの、その度合いが処理葉によってばらばらであったため、遺伝子発現の挙動を解析するための条件としては適さないと判断し、毒素生成菌株と非生成菌株の胞子接種での解析が最適であると結論付けた。
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