1マーカー遺伝子を使用した毒素欠損変異株接種時における発現挙動解析 宿主特異的毒素のエリシター効果を検証するため、平成21年度に選定した16種類の病害抵抗性関連遺伝子マーカーの内、最も再現性の高い7種類を用いて、ACT毒素生成菌株と毒素欠損変異株を不親和の組み合わせのラフレモン葉に接種した時における発現挙動の差異を解析した。その結果、6種類の遺伝子で、ACT毒素生成菌株接種時の方で発現量が短時間で最大、または、発現量が毒素欠損変異株接種時よりも多いという結果が得られた。残りの1種類の遺伝子おいては毒素欠損変異株接種時の方が強く発現誘導がかかるということが明らかとなった。これらのことから、宿主特異的毒素が不親和の組み合わせ時においては、多くの病害抵抗性関連遺伝子の発現を誘導する活性があることが判明した。 2宿主特異的ACT毒素によって発現が誘導される新規遺伝子群の探索 ACT毒素生成菌株と毒素欠損変異株をラフレモン葉に接種し調整したRNAを基にsubtractivePCRを行い、ACT毒素生成菌株接種時に発現誘導される遺伝子群を網羅的に解析した。その結果、100個以上の新規ACT毒素反応性遺伝子を得ることに成功した。これらの遺伝子の中には既に病害抵抗性に関与することが報告されている遺伝子をはじめ、機能未知の遺伝子も多数得られ、これまで明らかとされてこなかった新規病害抵抗性機構に関与する可能性を持った遺伝子を得ることができた.さらに、揮発性モノテルペン化合物を合成する遺伝子が単離されてきたので、カンキツ病害抵抗性機構には植物揮発性物質が重要であることが示唆された。本研究成果は、今後のカンキツ病害抵抗性機構における新規重要遺伝子の探索とその解明において大きく貢献するものと思われる。
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