本年度は、イネ、ナス科植物の代表としてタバコ、そしてシロイヌナズナを利用し、オートファジー抑制下における耐病性検定を開始した。並行して、BY-2細胞を利用し、植物防除剤候補のスクリーニングについても進めた。 1、 植物培養細胞を利用した植物免疫応答を亢進する化合物の選抜 タバコBY-2細胞を利用し、活性酸素種(ROS)生成量を指標とした、効率的な植物防疫剤のスクリーニング手法の開発を行った。併せて、スクリーニングの対象をメンブレントラフィック全般の制御剤に拡げ、候補の選抜を行った。 その結果、複数の植物防除剤候補の選抜に成功した。 2、 イネやナス科(タバコ)、シロイヌナズナ植物体による防疫剤効果の検証 BY-2細胞を利用した一次スクリーニングにより選抜された数種の化合物に関して、イネ、タバコ、シロイヌナズナ植物体を用いて、防疫剤としての効果検証を進めた。その結果、複数の化合物において、植物体レベルにおいても、防御関連遺伝子誘導等の免疫増強が観察された。シロイヌナズナを利用した耐病性検定の結果、まだ予備的ではあるが、菌の増殖抑制効果も観察された。今後は、有効な抵抗性品種の存在しない病原菌を中心に、耐病性検定を進める予定である。 本研究により、細胞内物質輸送や分解システムが、植物免疫を制御することを突き止め、こうした過程を適切に制御する薬剤により、植物の免疫能を賦活化できることを発見した。これらの知見は、新規防疫剤開発の基礎となる研究成果になると期待される。
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