NF処理により誘導される防御応答の誘導、およびその抑制のメカニズムを調べるために、野性型ミヤコグサとccamk変異体のNF応答を、マイクロアレイを用いて調べた。その結果、ccamk変異体で野性型植物より3倍以上強く誘導される遺伝子には、WARKYやERFなどの防御応答に関与する転写因子が多く含まれていた。またccamk変異体で強く誘導される遺伝子(つまり野性型植物ではCCaMKが抑制している遺伝子)の96%がキチンやフラジェリンにより誘導される防御応答遺伝子であった。一方でCCaMKに依存して誘導される遺伝子の67%が共生特異的であった。したがってCCaMKを介した共生シグナルは、これまで知られていた共生反応の開始だけでなく防御応答の抑制にも寄与していることが明らかとなった。 ミヤコグサにおけるファイトアレキシンを同定するために、キチンおよびflg22を処理するとイソフラボノイド系の化合物であるベスティトールが検出された。しかしNF処理では有意なレベルのベスティトールが検出されないことから、NF応答時の防御応答はファイトアレキシンの合成を介さない可能性が考えられる。また根粒菌に対するベスティトールの効果を調べたが、生育には影響しないことが明らかとなった。 IFS2遺伝子のプロモーターにGUS遺伝子をつないだものをミヤコグサに形質転換を行ったが、形質転換効率が悪く数ラインの再生個体しか得られていない。次年度に得られた形質転換体を評価して、スクリーニングに適したものが見つからなければもう一度行う必要がある。
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