1)これまでに、ショウジョウバエの前胸腺で任意の時期にエクジステロイドを不活性化する方法を確立した。一方で、ショウジョウバエの発育の解析において3齢幼虫の発育段階をきちんとトレースすることが非常に重要であるとともに困難であることが問題となった。その対応策として、3齢初期のエクジステロイド分泌に応答してGFPタンパクの蛍光が発現する系統のショウジョウバエを利用して、3齢期の発育ステージをトレースしながら3齢期でのエクジステロイドの役割の解析を行った。その結果、3齢初期に分泌されるエクジステロイドが不活性しても摂食を停止して蛹化場所を探すワンダリング行動に類似した行動を示す幼虫が観察された。今後、この現象がワンダリング行動であるかどうかをガットパージの確認などにより検証する必要があるが、変態に伴う行動変化を解析する手掛かりを得た。 2)ショウジョウバエにおけるecdysone(E)とJHによる蛹化時期の決定機構の解析を行った。3齢幼虫にEを摂取させると20Eを摂取させた場合よりも大幅に蛹化時期が早まり体サイズが減少する。EとJH類縁体を混合して摂取させると,蛹化時期と体サイズは正常になる。JHの役割を調べるためにアラタ体の細胞死によりJHを分泌できなくなった3齢幼虫にEを摂取させた。しかし、蛹化時期は早期化したものの、幼虫の発育異常は認められなかったことから、蛹化が可能になる時期まで、3齢幼虫はEには応答できないと考えられた。Eを摂取した3齢幼虫が摂食を停止したときの体重と、蛹化を遂げるために必要な3齢幼虫の最低体重(MVW)を比較すると、両者の値はほぼ一致した。以上の結果から、3齢幼虫はMVWを超えた時点からEに応答できるようになり、JHはMVWから摂食停止に至る時期にEの作用を抑制することで蛹化時期と体サイズの決定に関与していると考えられる。
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