研究課題
アゲハチョウの産卵行動は寄主植物に含まれる化学物質に制御されることが知られており世界的に研究が行われているが、2族の中間に位置するアオスジアゲハ族の産卵刺激物質に関する研究は行われておらず、世界中からその解明が待ち望まれている。本研究ではアオスジアゲハの産卵刺激物質を単離・同定し、日本産アゲハチョウ亜科のチョウと寄主植物の共進化における化学物質の役割の体系的な研究を完成させることを目的とした。野外の網室の中でアオスジアゲハの産卵行動を人工的に再現する生物試験を既に確立していたが、これに改良を加えるため産卵行動における誘因因子の必要性について検討した。その結果、クスノキ由来の芳香成分には本種の誘因物質が含まれることが判明し、これの存在下では誘因回数が上昇することが判明した。そこで触角電図(EAG)およびGC-EAD、GC-MSを用いて誘因物質を解析し、最終的に雌雄両成虫に対する誘因物質としてdecanalとnonanalを同定した。これら2化合物を用いて産卵刺激に関する生物試験をおこなうことで、産卵刺激活性の生物試験の成功率を上昇させることに成功した。新たに確立した生物試験方法をもとに、クスノキ葉の抽出物質を液-液分配で分画すると活性物質は有機層と水層の両画分に分配されたため、まず水層の活性成分の検討を行った。ODSカラムおよび逆相系HPLCで分画することにより活性は3画分に分画されるものの、単独では活性を示さず、これらを合一することで活性を示すことが判明した。昨年は天候不順のため生物試験が十分に行えず活性の追及はこれ以上行えなかったが、それぞれの画分の主成分について単離・精製し、機器分析の結果からsucrose,chlorogenic acidを同定した。これらの活性の有無が今後の検討課題となる。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry (印刷中,発表確定)