研究課題
昆虫は一般に振動に対して敏感であるが、振動に対する反応性及び感覚受容器の知見はコウチュウ目において極めて少ない。今年度はマツノマダラカミキリ成虫(以下、本種)を用いて振動反応性の解明と寄主木であるクロマツ(以下、マツ)の振動解析を進めた。樹木を伝わる振動によって、本種は捕食者回避や配偶者認識を行う。また、産卵に好適な衰弱したマツは振動を自発的に発することから、この自発的振動に基づいて本種は寄主木を認識する可能性がある。振動による産卵選択性を調べるために、加振機を用いて切断したマツ幹に一定周波数の振動を与えたところ、振動の振幅に依存して産卵は抑制された。次に、記録したマツの自発的振動をマツ切断幹に与えて、本種の産卵行動を連続的に観察した(プレイバック試験)。振動を与えない条件と比較した結果、産卵孔形成や産卵管挿入等の行動について頻度や時間に増減が見られた。マツ材線虫病により衰弱したマツにおいて、仮道管の気泡形成に起因する微小な高周波(20kHz以上)の振動発生は知られているが、本種が感受性を示す低周波の振動に関する報告は無い。今年度、マツで振動測定を行ったところ、低周波(50-200Hz)の自発的振動が衰弱期後半に発生することを確認できた。本種はマツの自発的振動の周波数帯域と振幅を含む振動刺激に反応を呈したことから、衰弱したマツの自発的振動を感知して産卵選択を行う可能性が示された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
森林総合研究所第二期中期計画研究成果選集 森林生態系における生物群集の解明
ページ: 12-13
日本音響学会聴覚研究会資料
巻: 40巻 ページ: 293-296
Plos One
巻: 5
Biology Letters
巻: 6 ページ: 582-584
巻: 40 ページ: 297-302