本研究課題では、カンキツクリーニング病の媒介虫であるミカンキジラミの体内における病細菌の局在・増殖部位及び移行様式と伝搬能力の関連を、伝搬試験とリアルタイムPCR法及びin situハイブリダイゼーション(ISH)法を駆使して解明する。平成21度は、切片作成及びISH法を行うのに必要な条件を整え、ISH法の前段階となるサンプルの組織固定、パラフィン包埋とミクロトームによる切片作成などについ条件検討を行うとともに、伝搬性保毒虫と非伝搬性保毒虫の虫体部位別病原細菌濃度を定量調査し、病原細菌の体内局在性研究に関する予備データを収集した。その結果、ショウジョウバエ類など他の昆虫類の切片作成法をもとに改変・検討した組織固定及び切片作成条件で、体内組織の形態がよく保たれたミカンキジラミ切片を安定して得ることができた。得られたサンプル切片をヘマトキシリン・エオジン染色によって組織染色したところ、前胸部のやや腹側寄りに左右1対の唾液腺と副唾液腺が明瞭に観察された。また、保毒虫の虫体を頭部~前胸部と中胸部~腹部に分割して、各部位の病原細菌濃度をリアルタイムPCR法によって定量すると、伝搬性保毒虫では頭部~前胸部に病原細菌が高濃度に存在しており、これは前胸部に位置する唾液腺に病原細菌が高濃度局在することを強く示唆していた。平成22年度は、病原細菌遺伝子に特異的なプローブを設計してISH法を行い、保毒虫切片上の病原細菌の局在部位を高精度に解明する。
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