研究初年度は、国内外の各地で野外調査を実施し、タマバエ科害虫およびその近縁種の発生状況や寄主植物の調査、および、天敵である寄生蜂類の探索などを実施した。日本国内で問題となっているタマバエ科害虫の同定や分類学的研究を実施するとともに、害虫およびその近縁種の生理生態特性や、タマバエ類の有効寄生蜂の探索を実施した。論文の実績としては、ナシの害虫であるナシシンクイタマバエresseliella yagoiの新種記載を行い、近縁種との分子系統解析の結果や、国内に置ける被害の状況を報告した。ノイバラバオレタマバエDasineura sp.による施設栽培バラの加害事例を報告した。国内外の学会大会においては、タマバエ類の分類や生態、成虫の羽化時期に関する報告、寄生蜂の同定や寄生率に関する報告などを行った。また国内および台湾、インドにおいて、タマバエ科の侵入害虫に関する講演、国内で問題となっているタマバエ科害虫に関する講演、タマバエの生活史戦略や生態特性に関する講演、タマバエによる寄主改変機構に関する講演などを行なった(学会発表14件、うち招待講演2件、依頼講演2件)。害虫種を中心とするゴール形成性タマバエ類の包括的分類体系の構築と、生理生態特性の解明による新規防除技術を確立するために有益な知見が多数得られた。初年度中に論文化した以外の成果に関しても、現在論文を執筆中であり、順次学術雑誌に報告していく予定である。
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