平成22年度は、昨年度に引き続き国内外の各地で野外調査を実施し、タマバエ科害虫およびその近縁種の発生状況や寄主植物の調査、および、天敵である寄生蜂類の探索などを実施した。日本国内で問題となっているタマバエ科害虫の同定や分類学的研究を実施するとともに、害虫およびその近縁種の生理生態特性や、タマバエ類の有効寄生蜂の探索を実施した。Resseliella属の新種記載論文を発表するとともに、タマバエ類の分類や生態、ゴール形成のメカニズム、成虫の羽化時期や植物フェノロジーとの同時性、寄生蜂の同定や寄生率に関する報告など、国内の学会大会において、8件を発表した。海外では、コスタリカで開催された第7回国際双翅目会議において、シロダモタマバエの分布や密度に影響を与える生物的および非生物的要因に関する口頭発表を行なった。この他、国際会議においてタマバエ類や天敵寄生蜂に関する話題2件を発表した。また、台湾の国立成功大学においては、招待講演として、ゴール形成性タマバエ類の生活史や生態特性、寄主植物との同時性や、個体群密度に影響を及ぼす要因に関して講演した。一連の調査、実験、観察を通して、害虫種を中心とするゴール形成性タマバエ類の包括的分類体系の構築と、生理生態特性の解明による新規防除技術を確立するために有益な知見が多数得られた。これまでの2年間に論文化した以外の成果に関しても、現在論文を執筆中であり、順次学術雑誌に報告していく予定である。
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