研究概要 |
ネッタイシマカやヒトスジシマカはデング熱やチクングニア熱といった感染症の主要な媒介蚊である。私たちは2009年にシンガポールで採集したネッタイシマカ(aegSP系)を材料として抵抗性機構の解明を進めた。aegSP系の成虫は採集時すでに35倍の抵抗性を獲得していたが,ピレスロイド系殺虫剤permethrinによる室内淘汰を行った結果,淘汰を重ねるに従ってaegSP系統の抵抗性レベルは上昇し、雌成虫のLD50値は採集時20ng/雌であったのが、8世代淘汰後に1648ng/雌に達した。これに伴い抵抗性比も1099倍へと上昇した。次に、成虫のin vitro代謝試験を行ったところ,雌成虫より調製した酵素液は^<14>C-permethrinを効率よく4'HO-permethrinに解毒するとともに,未知のタンパク分子がpermethrinにconjugateすることで解毒する機構が働いていることが明らかになった.これらのタンパク及び酵素分子は,共力剤のターゲット分子として極めて有望であると考えられた.今後はこの水酸化を担っているP450分子種の同定を進める予定である。一方,シンガポールで採集されたヒトスジシマカから,初めてノックダウン抵抗性遺伝子(kdr)を検出した.この遺伝子はpermethrinをはじめとするピレスロイド系殺虫剤に非感受性を示す遺伝的形質であり,今後,このアミノ酸変異(F1534C)が殺虫剤もしくは共力剤のターゲットとして重要になる可能性が示唆された.
|