研究概要 |
バイオインフォマティクス解析により、根粒菌Bradyrhizobium elkanii USDA61株ゲノムから4つの分泌蛋白質候補を選抜した。これらの分泌タンパク質をコードする遺伝子の破壊株を作製し、rj1遺伝子保有ダイズClark-rj1およびRj4遺伝子保有ダイズHillにて共生形質を検討したが、野生株との顕著な差はみられなかった。バイオインフォマティクス解析で検出できなかった分泌蛋白質の可能性を考慮し、現在異種相補試験によるスクリーニングを行っている。 USDA61株はIII型分泌系依存的にrj1遺伝子保有ダイズに根粒形成することができる。rj1遺伝子が根粒菌nod-factorのマメ科植物側受容体(NFR1,Nod factor receptor 1)の変異遺伝子であるという報告にもとづき、日本のダイズ品種エンレイのNFR変異体En1282において再現性を検討した。その結果、USDA61株はEn1282に根粒を形成したが、III型分泌系破壊株は全く根粒を形成しなかった。すなわち、rj1遺伝子保有ダイズClark-rj1と同様に、エンレイbackgroundにおいても根粒菌はIII型分泌系依存的にNFR変異体へ根粒形成できることが明らかとなった。発現解析の結果、USDA61株を接種したダイズEnl282の根において、共生遺伝子ENOD40およびNINの発現上昇がみられた。これらの結果から、根粒菌III型分泌系は、マメ科植物-根粒菌共生に必須と考えられていたNod factorとNFRから成る相互認証過程を経由せずに、共生シグナル伝達を活性化し、根粒形成を誘導することが示唆された。
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