トウモロコシは、根にリン酸吸収を補助するアーバスキュラー菌根菌が共生(感染)する。根の菌根菌感染率は、トウモロコシの系統、品種間で異なることから、品種改良にともなって、根-菌根菌共生系が変化(進化)した可能性がある。本研究は、減化学肥料型の栽培体系や品種の開発に向けて、品種改良にともなう根-菌根菌共生系の変化の解明を目指している。本年度は、昨年度までに栽培し、採取したトウモロコシ遺伝資源の根を供試して、根内に形成された菌根を染色して、菌感染率を計測し、遺伝資源における感染能力の変動を解析した。また、感染した菌根菌の菌相を解析するために、採取した根サンプルからDNAを抽出し、このDNAを鋳型にして菌根菌のリボゾームRNA遺伝子のPCR増幅を試みた。昨年度までの菌根菌感染率のデータと合わせて統計解析したところ、トウモロコシの近代F_1品種、日本在来品種及び自殖系統(F_1品種の親)のそれぞれで、生育初期の菌根菌感染率に品種・系統間差が認められた。F_1品種と自殖系統の菌根菌感染率を比べたところ、F_1品種の値が高いことから、他の形態形質と同様に、感染率にも雑種強勢が現れる可能性がある。過去に報告された実験手法に基づいて、菌根菌のリボゾームRNA遺伝子のPCR増幅を試みたが、増幅が極めて弱い場合や、増幅産物に期待されるDNA以外のDNAが多数含まれる場合があった。そのため、増幅産物の電気泳動により菌根菌相を推定、解析するためには、PCRプライマー等の増幅条件の更なる検討や増幅産物の精製が必要と考えられた。
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