昨年度までに採取したトウモロコシ根サンプルからDNAを抽出し、菌根菌のrRNA遺伝子に特異的な複数のPCRプライマーセットを用いてNested-PCRを行い、当該遺伝子を増幅した上で、DNA増幅物をアガロースゲルで電気泳動した。その結果、理論的は単一の長さのDNA増幅物が得られるところが、多くのプライマーセットで、長さが異なる複数のDNA増幅物が得られたことから、これら増幅物を直接、制限酵素断片長多型解析やDGGE解析に供することはできなかった。そのため、アガロースゲルで電気泳動した異なる長さのDNA増幅物の中から、rRNA遺伝子配列情報から推定される長さのDNA増幅物を切出し、精製して、幾つかの制限酵素を用いて制限酵素断片長多型解析を行った。その結果、断片長多型は観察されて、多様性の存在が推定されたものの、ゲルからの切出しと精製を経ているため、DNA量の低下により、断片化したDNAバンドの明瞭性が十分でなく、より正確な多様性の解析のためには実験手法の更なる改良が必要と思われた。 今年度までの調査結果を用いて、トウモロコシ遺伝資源の菌根菌感染率と育成履歴、特性データ(耐病性等)、形態形質との間の関連性を解析した。この解析では、大量のデータを処理できる統計ソフト・SASを用いて、高度な分散分析をおこなった。その結果、幾つかの遺伝資源グループにおいて、菌根菌感染率と地上部生育との間に正、又は、負の相関が観察されたことから、菌根菌感染を遺伝的に制御することで、トウモロコシの生育を改良できる可能性が考えられた。解析結果は英語論文に取りまとめ中であり、投稿予定である。
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