植物-植物生育促進菌類(PGPF)相互作用を遺伝子の発現解析を通して行うことによりPGPFの持つ有用機能を明らかにすることを目的とする。これまでに、PGPFの一種、Trichoderma koningiはミヤコグサの抗菌性物質合成を遺伝子発現レベルで抑制することで根内に侵入し、植物に対し高い生育促進能力を有していることを明らかにした。本年度は、抗菌性物質合成促進剤による遺伝子発現を本菌が抑制することを確認するとともに、根内へ侵入するために必要であると考えられるセルラーゼの生産性解析と本酵素をコードする遺伝子の単離を行った。 1.遺伝子発現解析: T.koningiのミヤコグサのファイトアレキシン生合成遺伝子の発現抑制効果を検証するために、抗菌性物質誘導剤とT.koningiの同時接種時におけるミヤコグサの遺伝子発現を解析した。その結果、エリシターとの同時接種においても、T.koningi単独接種時と同様の発現パターンを示した。 2.セルラーゼの粗抽出:培養ろ液からの粗抽出セルラーゼをSDS-PAGEにより分離した結果、検出された主なタンパク質は、T.reeseiやAspergillus nigerの生産する主なセルラーゼに近いサイズを示した。 3.セルラーゼ活性測定:T.koningiの生産するセルラーゼは、1%CMCを単一の炭素源として含む液体培地中に誘導分泌され、培養10日目にセルラーゼは最大活性値を示した。 4.セルラーゼ遺伝子の部分単離:各種Trichoderma由来のセルラーゼ遺伝子をもとに作製したプライマー対により969bpのセルラーゼ遺伝子の内部領域の増幅に成功した。増幅断片の塩基配列を決定した結果、T.virideやT.longibrachiatumなどトリコデルマ属菌のendoglucanase I遺伝子と非常に高い相同性を示すことを明らかにした。
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