1 リファンピシン耐性付与による放線菌の潜在的抗生物質生産能の活性化 国内各地の土壌から分離した249菌株の放線菌を抗菌試験(検定菌は黄色ブドウ球菌を使用)に供し、16菌株の抗菌物質非生産放線菌を選抜した。これらの放線菌のうち、Streptomyces属と簡易同定されたTHTY-1の潜在的な抗菌物質生産力の活性化実験に着手した。薬剤耐性選抜法を駆使して分離したStreptomyees sp. THTY-1のリファンピシン耐性株の中から、無作為に100菌株を選び、抗菌物質の生産性を調べた。その結果、驚くべきことに、55菌株で顕著な抗菌物質生産が認められた。すなわち、放線菌にリファンピシン耐性を持たせることで、極めて高効率で潜在的な抗菌物質生産力を活性化できることが判った。現在、抗菌物質生産を示したリファンピシン耐性株を用いて、潜在的な抗菌物質生産力の活性化に関わるrpoB変異の特定を進めている。また、THTY-1以外の抗菌物質非生産放線菌15菌株についての活性化実験にも取組み始めた。 2 rpoB変異による放線菌の潜在的な抗生物質生産活性化メカニズムの解析 潜在性抗生物質ピペリダマイシンの生産力を獲得したStreptomyces sp. 631689のrpoB変異株の定常期細胞から調製したRNAポリメラーゼは、特定遺伝子のプロモーターへの結合力が野生型RNAポリメラーゼとは大きく異なることが判明した。直接的な証明には至っていないが、変異型RNAポリメラーゼがピペリダマイシン生合成遺伝子の発現制御に関わるプロモーターへの高い親和力を獲得したことで、同遺伝子の発現が活性化され、結果的にピペリダマイシン生産の増大に繋がったものと推察した。詳細は解析中であるが、rpoB変異の特質が引き起こすRNAポリメラーゼの機能変化が、放線菌の潜在遺伝子活性化に深く関与することを突き止めた。
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