研究概要 |
リファンピシン耐性(rif^R)凸変異やストレプトマイシン耐性(str^R)変異を利用して放線菌細胞内の転写(RNAポリメラーゼ)および翻訳(リボソーム)を改変・増強することで,放線菌の潜在的な抗生物質生産力(潜在能力)を活性化できることを明らかにしてきた。この原理を駆使すれば,放線菌の代謝産物から新しいタイプの抗生物質を発見できることも実証した。しかし,本アプローチによる新抗生物質の発見はピペリダマイシンの一例にとどまっており,抗生物質探索研究におけるその真価を示すことが課題となっていた。本研究では,rif^R変異に焦点を絞り,放線菌の潜在能力開発における同変異の有効性を検証し,その影響メカニズムの解明と抗生物質探索への応用展開を目指した。 ・抗生物質非生産性放線菌の潜在能力活性化におけるrif^R変異の有効性検証rif^R変異を活用することで,抗生物質非生産性放線菌11菌株(昨年度までの検討で取得した)のうち6菌株の潜在的な抗生物質生産力を検出可能なレベルまで活性化できた。同検討をstr^R変異を活用して行ったが,活性化に成功した菌株は11菌株中3菌株で,活性化菌株の出現もrif^R変異の場合と比べて極めて低頻度であった。以上の結果から,抗生物質非生産性放線菌の潜在能力活性化にrif^R変異の活用が極めて効果的であることが明らかになった。 ・放線菌の潜在能力を強力に引き出すrif^Rの探索と特性解析放線菌基準株Streptomyces coelicolor A3(2)など様々な放線菌から分離した抗生物質高生産rif^R変異株を用いて,潜在的な抗生物質生産力を強力に引き出すrpoB変異を特定した。これにより,rpoB変異により放線菌の抗生物質生産が活性化する仕組みを,生化学・分子生物学的手法で本格的に解明するための準備が整ったので,現在,その課題解決に向けた着手に至っている。
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