大腸菌のペリプラズム空間には、ジスルフィド結合形成酵素としてDsbAが存在し、基質を酸化して還元型となったDsbAのシステイン(Cys)ペアが内膜タンパク質DsbBにより再酸化される。また、DsbBが受け取った電子は呼吸鎖成分のユビキノン(UQ)に渡され、最終的にはチトクロム酸化酵素を介して酸素が電子受容体となる(DsbA-DsbB-UQ複合体)。我々は還元ストレス(Cys)に曝すと本来酸化型で存在するDsbAが還元型で蓄積することを明らかにした。さらにDsbAの基質であり、大腸菌の生育に必須な外膜タンパク質OstAもまた、還元型で蓄積することが判明した。以上の結果から、過剰なCysがDsbA-DsbB-ユビキノン酸化システムを還元し、ジスルフィド結合不形成タンパク質が蓄積することによって、大腸菌の生育が阻害されると結論づけた。このことは本来、大腸菌が毒性の高いCysを解毒する機構を備えているとも考えられる。大腸菌の酸化システムに類似した仕組みは、酵母、植物、動物などの真核細胞の小胞体やミトコンドリアにも広く存在する。このことは生物種を超えたCysの毒性と一致する。
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