研究概要 |
本研究の目的は、植物が放出しているメタノールを栄養源として、植物表面や内部に多く存在するメタノール資化性菌、Methylobacterium属細菌に注目し、重要な作物の生育を促進する株の分離同定を行い、有望株のゲノム解析を通じ、植物生育促進能力の分子生物学的解析を行うことを目的としている。 試験した植物種の多くに促進効果をもたらしたM.aquaticum strain 22A株のゲノム解析(Roche 454 GS FLXのシングルエンドシーケンス)を行った。ゲノム解析により、コンティグ数490、平均コンティグサイズ16kbpの結果が得られた。本菌のゲノムは約7.7Mbpであった。ブラスミドは6つ存在した。植物との相互作用で重要と考えられるPQQ合成、メタノール酸化・異化経路、窒素固定、ビタミンB12合成などの遺伝子が存在することが分かった。これらのうち、約15遺伝子を選び、現在遺伝子破壊株の作成中である。 本属細菌は植物葉上細菌の内約10-20%を占めることが報告されている。葉上という過酷な条件で本属細菌が生存あるいは定着するためには、植物との何らかの物質交換がなされていることが想定された。そこで,植物の葉に存在し、水分や二酸化炭素の交換に重要な器官である、気孔に注目して、本属細菌が分泌する物質が気孔の開閉に与える影響を調べてみた。すると、本属細菌がメタノール生育時に分泌するある物質が、気孔を開く活性を持つことを新たに発見した。ある物質の濃度依存的に気孔が開くこと、光による気孔開閉には関与しないことなどが分かった。植物上で常在化する本属細菌の定着機構の解明につながる可能性があると考えている。
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