組換え体による分泌性タンパク質生産が困難な原因を突き止めれば、宿主の遺伝子操作や目的タンパク質への変異導入により、有用タンパク質の大量生産を実現できる。これまで、酵母非必須遺伝子破壊株を用いて網羅的に解析したが、分泌生産に大きく影響を及ぼしている非必須遺伝子はほとんどなかった。そこで、必須遺伝子に焦点を当て分泌生産に関わる遺伝子を探索した。 酵母必須遺伝子へテロ2倍体破壊株セットにルシフェラーゼ発現プラスミドを導入し、ルシフェラーゼ活性を定量的に測定した。1次スクリーニングでは活性が低下する破壊株も存在したが、正確な測定と増殖の程度を考慮すると分泌生産活性が低下する必須遺伝子へテロ破壊株は存在しないことが明らかになった。分泌生産機能は酵母の増殖にとって必須の機能であると考えられる。一方、分泌生産が高まった株を59株取得することができた。これらの破壊株のうちプラスミドの保持率が高くなったものが12株存在したことから、これらは遺伝子破壊によりプラスミドの複製が高まったと考えられる。その他の株が分泌生産に直接関与している可能性が高いと考えられることから、22年度以降にこれらの遺伝子の機能の解明を進める。 分泌生産経路にはいくつかのステップがあるが、同定された遺伝子がどこに関与するかを明らかにするためのモデルルシフェラーゼを構築した。 ・ 低発現コドン型:ルシフェラーゼ配列をヒト型のコドンにしたルシフェラーゼ発現カセットを構築し酵母で発現させたところ、予想に反し高発現コドンに比べ格段に高い活性を示した。この配列に高発現をもたらす配列が含まれていることが明らかになった。 ・ 糖鎖付加配列削除型:基準型ルシフェラーゼの2か所のN型糖鎖付加配列を削除した。これにより糖鎖修飾および修飾糖鎖が関与する遺伝子を明らかにできる。 ・ 分解シグナル融合型:ルシフェラーゼに分解シグナル配列を融合させると、活性が消失した。これを用いてユビキチンプロテアソーム関連遺伝子を特定できる。
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