研究課題
前年度までの研究で得た、清酒醸造中に酵母のミトコンドリア輸送が物質代謝に役割を持っているとの知見を元に、ミトコンドリア輸送をターゲットとしてピルビン酸の低減する清酒酵母の育種を行った。すなわち、清酒酵母に突然変異を起こさせた後、ミトコンドリア輸送阻害剤エチルα-トランスシアノ桂皮酸に耐性な株を分離した。この分離した株を使って実験室スケールで清酒を仕込み、ピルビン酸が統計的に有意に低減していることを確認した。さらに育種した清活酵母がエタノール生産性の減耗を伴わずにピルビン酸の低減を示すことを総米100kgの中規模パイロットスケール、総米1トンの工場スケールでも確認した。ピルビン酸の低減は酒類業界における長年の技術課題であったことから、これまでピルビン酸の低減する清酒酵母は育種されていたが、エタノール生産性の減耗を伴うため、実際の製造での使用には若干の問題があった。従ってこの育種した清酒酵母は、エタノール生産能演が耗せずに工場スケールでピルビン酸が低減する初めての清酒酵母の育種例となった。またこの育種は同時に、オルガネラへの物質輸送をターゲットとする微生物の育種が可能であることを初めて実証することになった。これまでの発酵微生物の育種でオルガネラ輸送をターゲットとするというアプローチはなかったことから、発酵微生物の育種の新しいアプローチを示すことができた。この新しいアプローチは清酒酵母だけでなく一般の発酵微生物の育種にも活用されていくことが今後期待される。
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Journal of the Institute of Brewing
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