研究概要 |
本研究は、海底下堆積物より新規な脱ハロゲン呼吸細菌および関連遺伝資源を取得することを目的として行った。昨年度、世界各地の海底堆積物(東太平洋赤道域、ペルー沖、下北半島沖、および南海トラフ、※最深部358mbsf)から多様な還元的デハロゲナーゼホモログ遺伝子を得た。そこで、本年度は、南海トラフにおいて採取された海底堆積物コア試料(Site C0001、C0002、C0004、C0006、C0007、C0008)を用いて海底堆積物における脱ハロゲン活性を評価した。各種の有機ハロゲン化合物に対する脱ハロゲン活性を測定した結果、Site C0001およびSite C0002において、2,4,6-トリブロモフェノール(2,4,6-TBP)、2,4,6-トリヨードフェノール(2,4,6-TIP)およびトリクロロエテン(TCE)の脱ハロゲン反応が検出された。2,4,6-TBPおよび2,4,6-TIPはフェノールへと完全に脱ハロゲン化された。一方、TCEはcis-1,2-ジクロロエテンへ脱塩素化された。次に、同試料よりRNAを抽出し、RT-PCRによる16S rRNA遺伝子のクローン解析を行った。その結果、既報の脱ハロゲン呼吸細菌であるDesulfomonile属に分類されるクローンが検出された。以上の結果、南海トラフの海底堆積物においては、有機物に富む前弧海盆の堆積物にハロフェノール類およびTCEを脱ハロゲン化する微生物が生息することが示唆された。
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