研究課題/領域番号 |
21780086
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
尾間 由佳子 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究支援者 (20443997)
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キーワード | クロマチンリモデリング複合体 / ゲノム安定性維持 / アクチンファミリー / クロマチン / 細胞核 |
研究概要 |
生物の遺伝情報を制御するエピジェネティクスにおいて、クロマチン構造の変換が重要な役割を果たしている。さらにクロマチン構造に加えて、細胞核内のクロマチン空間配置も重要な役割を果たす。我々は、DNA複製におけるエピジェネティック制御機構として、複製フォークの進行再開にINO80クロマチンリモデリング複合体が関与することを明らかにした。そこで、INO80複合体のゲノム安定性維持への関与を解析するために、ゲノム上におけるINO80の結合部位について解析した。その結果、ゲノム上の広い領域にINO80複合体の結合が認められ、とくに遺伝子の転写制御領域への結合が観察された。さらに、複製起点や、人為的に導入した反復配列上への結合も認められた。INO80複合体の更なる機能解析のため、INO80複合体の特異的構成因子であるArp8にデグロンタグを導入することで、誘導的にINO80複合体の機能を欠損することのできる酵母株を作成した。この株を用いて、ゲノム安定性を解析したところ、INO80複合体の存在とゲノム安定性維持との間に明確な相関が観察された。これらの結果は、INO80複合体がゲノムの広範囲に結合し、ゲノムの安定化維持に寄与していることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酵母から、植物、ヒトにまで、進化的に高度に保存されたINO80クロマチンリモデリング複合体がゲノム安定性維持に関与すること、またその分子機構の一部を見出すことができたことは、生物のゲノム安定性維持における普遍的な機構の解明につながるほか、がんなどの機構解明や治療への応用への展開も期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が順調に進んでいることから、基本的には当初の計画に従って研究を遂行することとする。それに加えて、予備的な実験から、INO80複合体が切断されたDNAが核膜近傍に移行する現象にINO80クロマチンリモデリング複合体が必要であることが示されている。そこで、出芽酵母において誘導的にDNA二本鎖切断を起こす系を利用し、INO80複合体、ヒストン、核膜孔複合体の変異株を作成し、DNA切断領域の核膜近傍への移行に関してさらに詳細に解析を行う。
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