本研究では、セレン代謝とセレンタンパク質の生合成に関与するタンパク質・酵素群が成し遂げる厳密にセレン特異的な化学変換の構造機能の全貌を原子レベルで詳細に明らかにすることにより、セレンの微量必須元素としての機能発現制御の分子基盤を築き上げことを目的とした。 セレノシステインリアーゼがセレンと硫黄を識別してセレノシステインのみに作用する機構について、反応中間体複合体状態の構造解析、速度論解析、質量分析を駆使して詳細に解析した。活性中心において基質から奪ったセレン原子を本酵素がどのようにして活性中心外に汲み出し、他のタンパク質へと転移するのかを明らかにした。 Geobacter sulfurreducensは細胞の表面から細胞外の電子受容体となる金属化合物へ電子を移動させる能力をもつ。この還元の過程で本菌はエネルギーを獲得し生育する。本菌のゲノム配列を解析した結果、サブユニットあたり5つのヘム結合部位と1つのセレノシステイン残基をもつ新奇タンパク質MHSEP (multi-heme-containing selenoprotein)が見つかった。Cross over PCR法によりP.aeruginosa Cyt c_<551>のペリプラズム移行シグナルを組み込んだMHSEP遺伝子断片の作製に成功した。また、この断片をpET22b Vectorに挿入した同遺伝子発現用Vectorの作製に成功した。これら作製した2つの発現VectorおよびE.coli由来ヘム生合成系遺伝子の発現VectorであるpEC86を同時に導入した三重形質転換体の作製に成功した。
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