研究概要 |
本研究は、ヒトの単細胞モデル生物・分裂酵母を用い、細胞形態形成と細胞増殖との連携制御機構の解明を目指している。具体的には、分裂酵母の細胞形態形成ネットワーク(MOR経路)について、(目的1)MOR経路の細胞極性制御における分子機構の解明、(目的2)MOR経路の破綻(極性異常)をモニターする新規チェックポイント機構(細胞周期遅延機構)の解明を目指し、以下の研究を行った。 (目的1)(1)MOR経路は、細胞質分裂の開始を制御するSIN経路の下流で機能する(分裂後の細胞極性の確立に重要)。その詳細な制御機構について調べた結果、M期でSIN経路が活性化(細胞質分裂に重要)する間、MOR経路は、SIN経路により負に制御されることがわかった(Orb6キナーゼ活性を負に調節)。さらに、MOR経路の活性化が、細胞質分裂を阻害することが示唆された、つまり、分裂期にSIN経路が、MOR経路の活性を抑えることで、細胞質分裂の完了から、分裂後の細胞極性の確立への順序を保証する機構の存在が示唆された1)。(2)MOR経路と機能関連する分子として、新規GCK/Ppk11を同定し、細胞分離と細胞極性制御において、MOR経路と重複した機能を担うことがわかった2)、 (目的2)MOR経路構成分子の変異体が示す、Wee1依存的G2期遅延機構の全体像を明らかにするために、nak1、orb6((MOR経路構成分子)変異体と非必須キナーゼ破壊体(89株)との二重変異体を構築し、その表現型を調べた。その結果、合成致死性を示すものは、存在しなかったが、生育を悪化する、または、高温感受性を抑圧する遺伝子を複数同定した。現在、取得した遺伝子について詳細な解析を進めている。 1) S.Ray, K.Kume et al. J.Cell Biol. 190 (5) : 793-805 (2010). 2) T.Goshima, K.Kume et al. J.Biol.Chem. 285 (45) : 35196-205 (2010).
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