超好熱アーキアにはα_4β_4型及びαβγδ型の2種類のL-プロリン脱水素酵素複合体(ProDH)が特異的に存在する。本研究ではこれらの複合体酵素の機能と構造を明らかにし、その電子伝達機構を明らかにすることを目的としている。α_4β_4型ProDHはその電子伝達に寄与する鉄イオウクラスター(ISC)が壊れた状態での構造しか得られていなかった。ISCが壊れていない構造を決定するため、酸化防止剤であるDTT存在下での結晶化を行ったが、高分解能の結晶を得るには至らなかった。この酵素の隣り合うαサブユニットの381番目のシステイン残基はジスルフィド結合により結合しており、これが高次構造の形成やタンパク質の安定化に寄与していることが示唆されたため、このシステイン残基をセリンに置換し、ジスルフィド結合の影響を解析した。変異酵素はネイティブと同様のα_4β_4構造をとり、高い耐熱性を示すなど、ジスルフィド結合の有無による大きな変化は認められなかった。αβγδ型の酵素については、Thermococcus profundusのProDHを対象として、酵素の結晶化を目指した。δサブユニットにだけHisタグ配列が付加されて発現する大腸菌発現系を構築して酵素を精製し、結晶化を試みたが、現在のところ結晶は得られていない。この酵素はα、γ、δサブユニットにISCを有しており、これらが不安定になっている可能性があるため、ISC変異酵素を作製し、さらに結晶化スクリーニングを進める予定である。
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