ラジオデュランスは生物にとって致死的効果の高いDNA二本鎖切断を効率よく修復する機構を持つ事に起因している。ラジオデュランスのゲノム中にはNAD依存型DNAリガーゼDR2069とATP依存型DNAリガーゼDRB0100の二種類のDNAリガーゼが存在する事がゲノム解析の結果から予想されている。しかしこれら2つのDNAリガーゼのどちらが高効率DNA二本鎖切断に関与しているか明らかにされていない。そこで本研究では上記二種類のタンパク質の生化学的、物理化学的解析を行い、二本鎖切断修復に関与するタンパク質を同定し、その機能解析を行う事を目的としている。大腸菌発現系の構築を行ったところ、両タンパク質の発現量は極めて乏しく高純度精製は困難であったが、N-末端もしくはC-末端にHis-tagを付与した発現系を構築し、高純度に精製する事に成功した。N-末端にHis-tagを付与したDR2069にはDNAリガーゼ活性が認められたが、C-末端にHis-tagを付与した発現系では活性を確認できなかった。またN-末端もしくはC-末端にHis-tagを付与したDRB0100はどちらもDNAリガーゼ活性は認められなかった。今後、DNAリガーゼ活性が認められたDR2069とDNA修復促進タンパク質PprAの協調機構を明らかにするため、より詳細な生化学的解析、さらには分子機構の解明を目指し複合体の結晶化を行う。一方DNAリガーゼ活性が認められなかったDRB0100に関してはRNAを基質とする可能性もあるため、RNAを用いた生化学的解析を継続し、さらにHis-tagを付与したDRB0100を用いて菌体抽出液からのpull-downアッセイを実施し、相互作用分子の探索を行う。
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