研究課題
本研究の目的は、薄層クロマトグラフィーと質量分析の技術を融合した高感度解析を目指す新規分析技術の確立である。薄層をそのまま質量分析に供する報告は今までにも数多く報告されてきたが、薄層由来のバックグラウンドが高く、決して高感度とは言えなかった。そこで、イオン化におけるバックグラウンドを統一し、再現性のある測定を行うため、TLCからPVDF膜へ脂質を転写し(TLC-Blot)、その転写膜を直接質量分析するTLC-Blot-MALDIの手法を確立することを目的とした。初年度に、転写から質量分析までの分析技術の再現性を得る事に成功した。次年度には、質量分析における解析範囲を一次元から二次元に高め、多数検体を一度に解析できるよう広範囲をイメージングする手法を開発し、多検体のディファレンシャル解析を可能とした。更に、微量な脂質の検出を目指した手法の高感度化についても検討を行い、微量な脂質の検出を試みた。本年度は実際の生体試料の解析を行い、確立した技術の応用性を検討した。甲殻類の卵巣成熟段階に伴い、卵胞含有脂質が変化する事が知られていたが、その分子種レベルの解析は未だ行われていなかった。そこで、本法を用いて発生段階に伴う脂質変化を明らかにした。また、マウスを用いた骨格筋収縮刺激に伴う脂質変化についても解析を行い、収縮後に中性脂肪が減少し、特定の高度不飽和脂肪酸を持つリン脂質が増加する傾向を観察できた。更には肝切除後の脂肪肝における脂質分子種解析、牛肉の産地判別のための脂質分子種分析を明らかにした。得られた実験結果については原著論文5報、及び日本医用マススペクトル学会にて発表した。
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