本研究の目的は、イネ科植物にとって重要な珪酸ガラス(シリカ)形成機構の一端を明らかにすることである。特にシリカ重合に関与する有機物が存在するかどうか探索することが主目的である。21年度の研究実施計画に照らし、以下の3点について、21年度中に行った研究の概要を記載する。 1) イネ葉身の顕微鏡観察 7月から10月まであきたこまちの葉身を経時的に採集し、走査型電子顕微鏡(SEM、元素分析装置付き)を用いて観察した。その結果、葉身表面に多様な珪酸構造体(シリカ)の存在を確認した。また、葉身を灰化することによつてSEMでは確認が困難であった葉身内部の機動細胞由来のシリカ(ファン型シリカ)を光学顕微鏡で観察し、その数量を計測することができた。葉身表面に存在していたシリカについては7月の時点で既に葉身表面を覆っていたが、ファン型シリカのみ、8月の出穂期以降に急激に増加することが明らかとなった。 2) 葉身、特に機動細胞由来バイオシリカの単離、有機物の抽出 1)で得られた知見に基づき、8月の出穂期以降の葉身を大量に集め、ファン型シリカを単離した。単離したシリカの一部をフッ化水素で可溶化し、可溶性画分を蒸留水に対して透析後、濃縮して電気泳動に供したところ、アミノ基を含む有機物の存在が確認された。現在、再現性を確認中である。 3) 珪酸重合活性系の確立 Brunnerらの方法に準拠し、過飽和の珪酸溶液を作製して珪酸の重合を試みたが、重合活性測定系としてそのまま使用するには、いくつかの検討すべき課題があることが判明した。 これらの研究成果の一部については第4回バイオミネラリゼーションワークショップで発表した。
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