研究概要 |
本研究の目的は、イネ科植物にとって重要な珪酸ガラス(シリカ)形成機構の一端を明らかにすることである。特にシリカ重合に関与する有機物が存在するかどうか探索することが主目的である。 平成22年度の研究実績計画に照らし、以下の2点について、22年度中に行った研究の概要を示す。 1)葉の機動細胞由来バイオシリカからの有機物の抽出と精製 葉から機動細胞由来のシリカを大量に精製するため、粉砕機と時計皿を用いた葉からシリカを簡便に単離する方法を開発した。精製したシリカをフッ化水素酸で処理し、可溶性区について限外分子量1000kDaの透析膜を用いて透析を行った。透析内液を凍結乾燥した結果、綿状の有機物を得ることができた。この有機物をNu-PAGE(低分子を分画できる電気泳動)に供した結果、分子量2000前後にのみクマシーブリリアントブルー(CBB)で染色されるバンドが検出された。再現性が得られたことから、イネのシリカには有機物が含まれていることが明らかとなった。さらに、この有機物の性状を明らかにするため、各種HPLCカラムを用いた精製を計画したが、震災による影響により購入予定のHPLCカラムが入手できず、22年度内に分析することができなかった。しかし23年度内において繰越金を使用してHPLCカラムを購入した。 2)シリカ重合活性検定系の開発 Matsunagaらの方法(Chem.Biol.Chem.,2007)を参考に、ケイ酸重合活性検定法を検討した。本検定法により合成したシリカ粒子の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)により確認した。23年度は本法により、上記1)で単離したイネ・シリ由来有機物のケイ酸重合活性を実際に測定することができた。
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