1.代表的食品たんぱく質の一つである牛乳α-カゼインの消化管内分泌細胞での認識機構を明らかにするために、消化管内分泌細胞株におけるα-カゼインによる消化管ホルモンCholecystokinin(CCK)の分泌機構を解析した。その結果、Transient Receptor Potential cation channels(TPRチャネル)に属し、辛味や冷感の受容体として知られるTRPA1が、α-カゼインの認識に関わることが示唆された。 2.アミノ酸や塩基性ペプチドを認識することが知られているカルシウム感知受容体(CaSR)の特異的阻害剤を用いて、消化管内分泌細胞株における種々の食品ペプチドによるCCK分泌作用への影響を調べたところ、いくつかの食品ペプチドのCCK分泌作用が抑制された。また、電気透析機により低分子画分を除去したところ、CaSR阻害剤の影響を受ける食品ペプチドと受けない食品ペプチドが見られ、CaSRが種々の大きさのペプチド認識に関わることが示唆された。 3.上記CaSRのアゴニストである塩基性たんぱく質プロタミンをラットに経口投与することにより、経口グルコース負荷試験における血糖上昇が抑制されることを見出した。また、プロタミンが消化管ホルモンGLP-1の分泌を誘導することを確認し、腸管におけるCaSRの活性化が、GLP-1分泌促進や胃排出抑制を介して血糖上昇抑制に寄与することが示唆された。
|