前年度までにいくつかの食品ペプチドによる消化管ホルモンCholecystokinin(CCK)分泌促進に関して、カルシウム感知受容体(CaSR)の関与が示唆される結果が得られた。今年度は、さらに多くの食品ペプチドに関して、これらによるCCK分泌がCaSRアンタゴニストによって抑制されるかを検討した。市販、および自ら調製した各種食品たんぱく質加水分解物合計12種類のうち、11種の食品ペプチドによるCCK分泌が、程度は異なるものの、CaSRアンタゴニストにより抑制された。一方で、食品ペプチド受容体候補としての可能性が示唆されているペプチド輸送担体(PepT1)の阻害剤では、各種食品ペプチドによるCCK分泌は抑制されなかった。 CaSRを発現しないヒト腎臓由来HEK293細胞に、CaSR発現ベクターを導入し、各種食品ペプチド暴露時の細胞内カルシウム濃度変動を観察したところ、多くの食品ペプチドにより、濃度依存的に細胞内カルシウム濃度の上昇が観察された。CaSRを導入していないMock処理のHEK293細胞では、食品ペプチドに対する応答は見られなかったことより、各種食品ペプチドがCaSRを活性化することが明らかとなった。 CaSRはアミノ酸の受容体として機能することから、食品ペプチドに含まれる遊離アミノ酸がCaSRを活性化する可能性も考えられた。ゲル濾過クロマトグラフィーにを用い、各種食品ペプチドより約500Da以下の画分を除去したところ、用いた食品ペプチドによるCCK分泌は維持された。この時CaSRアンタゴニスト存在下で、多くの食品ペプチドによるCCK分泌は部分的に抑制された。 これらの結果より、CCK産生細胞において、CaSRはアミノ酸だけでなく、種々の大きさのペプチドを認識して、CCK分泌を誘導することが明らかとなり、CaSRが食品ペプチドとして機能することが強く示唆された。
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