本研究では脂肪細胞での脂質代謝、糖代謝を調節する農林水産物に含まれるキサントフィルの探索、及び食品素材の検討をおこなった。これまでの研究で褐藻類に特徴的に含まれるフコキサンチンが脂肪細胞に働きかけ、抗肥満、抗糖尿病作用を有することを明らかにしている。この結果を踏まえ類似の構造を有する物質に注目し、マウス由来3T3-L1脂肪細胞を用いた検討をおこない、以下の知見を得た。 1.コマツナやホウレンソウに含まれる色素成分であるネオキサンチンが3T3-L1脂肪細胞の脂質蓄積を抑制する効果を示した。またインスリン抵抗性の惹起に関る脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカイン(レジスチン、MCP-1)の発現を抑えることが明らかとなった。 2.トウガラシやパプリカに含まれる色素成分が、脂肪細胞から分泌される脂質代謝、糖代謝の改善作用を示すアディポネクチンの分泌を充進することが明らかとなった。また、脂肪細胞とマクロファージ細胞の共培養をおこない、生体内に近いin vitoroの評価系を構築し、インスリン抵抗性改善作用についての評価をおこなった。その結果、パプリカ色素抽出物にインスリン抵抗性惹起に関るアディポサイトカインの発現を抑える物質が含まれることが明らかとなった。 3.脂肪細胞での熱産生により脂質代謝を促進させる作用を示すフコキサンチンを多く含む、青森県産の海藻種を同定した。 以上の結果より脂肪細胞に働きかけ、生活習慣病の予防につながるキサントフィルの候補物質が明らかとなった。今後は動物試験により生体内での効果について明らかにするとともに、その機能の作用機構の詳細について検討をおこなう。
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