本研究では食事脂質の消化産物であるモノアシルグリセロール(MG)の腸管吸収代謝の詳細を明らかにすることを目的としている。昨年度に引き続き、MGの細胞内輸送に関わると考えられる脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)に対する結合性評価を行った。結合を競合アッセイにより測定するために脂肪酸の蛍光アナログを使用するが、昨年度選択したBODIPY FL C16が適さなかったため、今年度はcis-parinaric acid (CPA)を使用した系の確立を目指した。その結果、L-FABPおよびI-FABPに結合したCPAはオレイン酸と置換されることがわかったが、MGについては弱い活性が示唆されるものの明確ではなかった。使用する濃度等の検討ならびに現在研究協力者(渡辺嘉・大阪市工業研究所)らのグループで合成しているエーテル型MGを用いた再実験を行う必要がある。培養細胞を用いたMGの取り込み解析実験においては研究協力者(高橋信之・京都大学)の協力により、脂肪酸輸送担体の一つであり、ヒト小腸モデルであるCaco-2細胞に発現していないことが知られるCD36を発現させた安定株を樹立することができた。これにより脂肪酸の膜輸送担体の一つであるCD36のMGの膜輸送への影響を明らかにすることが可能となったので、引き続き取り込み実験を実施する。さらに、吸収後の腸管細胞内イベントを明らかにするために、リンパカニュレーションラットを用いた。含有脂肪酸比が類似したトリグリセリド(TG)とリン脂質を投与し、リンパ液における脂質構成を評価することで、MGと脂肪酸の吸収代謝の特徴を見出すことが可能となった。
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