本研究は、ニラ抽出物の示すピロリ菌増殖抑制効果に関与する物質の特定、ならびに抑制効果の発現メカニズムの系統的な解明を行い、ピロリ菌の除菌治療と予防を補助し得る食品の開発、ならびに新薬剤素材の提案を目的とするものである。今年度は、(1)広範囲(約50株)め臨床株に対するピロリ菌増殖抑制効果試験(in vitro)と(2)ニラ抽出物中に含まれるピロリ菌増殖抑制関与成分の解明を主テーマとし、研究を進めた。(1)のテーマでは、51株の臨床分離株に対する試験を実施した。その結果、ニラ抽出物が、分離元の疾患、地域、遺伝子型、性別、抗生物質耐性の異なるピロリ菌株(51株)全てに対して増殖抑制効果を示すことを明らかとした。また、その効果には殺菌作用の関与があることも明らかとなった。この結果より、臨床の場で問題となっている抗生物質耐性ピロリ菌の除菌に対して、ニラ抽出物の使用が有効であることが示唆された。(2)のテーマでは、ニラ抽出物中に含まれるピロリ菌増殖抑制関与成分が酸性条件下でも安定であること、ならびに、加熱処理後もその効果を保持していることを明らかとした。この結果は、ニラ抽出物が実際の胃内でも機能し得る可能性が高いことを示唆するものであった.また、食品加工において必須工程である加熱殺菌処理後も十分に効果を発揮し得ることを確認できた、加えて、今年度の研究において、増殖抑制に関与する成分がニラ中に含まれる揮発性成分である可能性が示された。今後、本物質の単離精製と構造解析を行い有用成分の特定を進める予定である。
|