研究概要 |
(1) 男性ホルモンをリガンドとしたアンドロゲン受容体(AR)の転写因子としての機能は,前立腺がん予防や治療の標的として考えられている.抗アンドロゲン治療後に再発した前立腺がんにおいては,リガンド非依存的なARの活性が認められるが,その活性化機構に関しては不明な点が多い.本研究により,前立腺がん細胞株LNCaPにおいて,ARのC末端側に位置するリガンド結合ドメイン(LBD)を欠損したARΔLBDの発現を見出した.このARΔLBDは,これまでの研究からリガンド非依存的に核局在し,恒常的転写活性型として機能すると予想された.ARΔLBDはリガンド非存在下やアンタゴニスト存在下でのみ産生され,アゴニストであるテストステロンやジヒドロテストステロン存在下では産生されなかったことから,ARΔLBDの産生は,抗アンドロゲン治療後の前立腺がんの再発に関与することが示唆された.ARΔLBDは野生型ARからプロテアーゼによる切断により産生されると考えられたため,切断部位に関して検討した結果,現在,約20アミノ酸までの範囲で絞り込むことができた. (2) ブドウの果皮に含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールは,ARのLBDに結合することなくARの転写活性を抑制する.この機構に関して検討した結果,レスベラトロールが核に局在するARを減少させることが判明し,この局在制御にアセチル化修飾の関与が示唆された.
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