研究概要 |
本研究では、(1)フラボノイドのベシクル化条件の最適化、(2)小腸上皮細胞内輸送の修飾により、高効率に生体調節機能を発揮する「ナノスケール化食品素材」という技術概念の確立を目指している。(1)に関しては、卵黄ホスファチジルコリンを主要な構成脂質とする30-200nmの範囲にサイズ制御されたモデルベシクルを用いて検討した。フラボノイドであるhesperetin, quercetinが飽和溶解度超えて安定に分散化させることが可能であった。Hesperetinは脂質ベシクルとバルク水相に分配する形で存在し、その分配係数はベシクルサイズが小さいほど小さくなった。Caco-2細胞単層膜を用いたin vitroモデル系において、ベシクルとの共存によってhesperetinの腸管からの吸収性が促進する可能性が示唆され、この吸収促進効果は透過によって減少したhesperetinが分配係数に従ってベシクル脂質二重膜より供給されることに起因することが示された。さらに、緩衝液中で不安定であるquercetinは、ベシクルとの共存により安定性が増大し、不安定なフラボノイド等のベシクル化によりバイオアベイラビリティが向上する可能性が示唆された。(2)に関しては、ジペプチドTrp-Glyがアレルゲン等の巨大分子の細胞内輸送を修飾することを明らかにしているが、トランスクリプトーム解析の結果、Trp-Gly処理により複数の細胞内輸送関連遺伝子の発現量が変化することを明らかにした。また、ベシクルの細胞内輸送および細胞間隙の拡散による透過を観察するための、サイズ制御されたFRET蛍光二重標識ベシクルを作製した。Trp-Glyによる細胞内輸送修飾機構の解析をさらに進めることで、機能性因子の吸収促進に関する方策の確立につながり、蛍光二重標識ベシクルは機能性因子を保持したベシクルの消化管内動態の解析に利用可能であると考えられる。
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