群馬県草木地域の東京農工大学演習林において、間伐状態の異なる林分(当年間伐スギ林、間伐15年後スギ林、間伐15年後ヒノキ林、壮齢スギ林、広葉樹林)のアリ類および土壌動物を調査した。その結果、アリ類の餌誘引法では、当年間伐のスギ林において、誘引されたアリ類個体数は多かったが、誘引されたサンプルとされなかったサンプルが明瞭に区別された。それに対して、間伐15年後および壮齢のスギ・ヒノキ林と広葉樹林では、誘引されたアリ類個体数は少ないものの、どのサンプルにおいても一定のアリ類の個体数が誘引されていた。一方、同一林分にてハンドソーティング法によって土壌動物を採集したところ、間伐実施後の経過年数が少ないほど、土壌動物の分類群数は少なかった。これらのことは、簡便な調査方法である餌誘引法で明らかにできるアリ類の活動性は、伐採撹乱による土壌環境の不均一性や餌資源の減少などが影響しており、伐採撹乱の指標として有効であることを示唆している。 また、森林生態系変化に対するアリ類以外の生物指標の候補として、野外において確認・同定の容易なテントウムシ群集と、環境変化に鋭敏に反応すると予想される樹洞の水たまりの水生生物群集に着目し、それらの分類群数・個体数および季節変化など、予備的な調査を実施した。その結果、テントウムシは群集構造の解析によって、都市緑地を評価する生物指標として利用できる可能性が示唆されたが、樹洞を模した人工容器の水たまりの水生生物群集は、外部環境よりも内部環境(例として、混入された落葉落枝・昆虫遺骸の量)の影響が大きく、森林の生態系変化を評価する生物指標として用いるのは難しいものと判断された。
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