ブナ樹冠内では空間的に光環境が大きく異なり、相対照度で2~100%とその変化は大きい。また、光環境によって葉の生理生態的特性が変化することはよく知られており、明るい光環境にある陽葉は、高い光合成能力と、形態的には厚い特徴を持つ。一方、より暗い環境にある陰葉では、逆に形態的に薄く低い光合成能力となる。こうした、光環境勾配に対する葉の生理生態的特性の反応についての研究は多く行われているものの、生理生態的な特徴で区分しだ樹冠内での葉量の分布に関する報告ば少ない。樹冠部における光合成を求める際には、葉の光合成能力とその光環境の他、これに対応した葉量評価が重要になる。そこで、光合成能力を評価する指標として比葉面積(SLA)を用いる。落葉のSLA分布から、光合成能力別の葉量を求あ、この結果を利用してブナ樹冠における光合成推定を試みる。これにより、樹冠光合成の推定における光合成能力別葉量の重要性についての評価を行う。 単位葉面積あたりの日積算光合成量はSLAが増加するにつれて低下し、SLAが300cm^2g^<-1>より高い葉では負の値を示した。また、落葉のSLAは76~594cm^2g^<-1>の範囲にあり、120~130cm^2g^<-1>にピークを持つ分布を示した。これらから、単位林分面積あたりの樹冠光合成を求めると488.4mmol m^<-2>d^<-1>となり、その80%はSLAが160cm^2g^<-1>より低い葉に因ると推測された。
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