本研究は、政府や援助プロジェクトを通じたバイオガスの導入が20年近く継続しているネパールにおいて、バイオガスの導入が薪炭材利用量、森林植生、森林の管理主体である地域住民の生計活動、森林管理体制、地域社会などに与える影響について、定量的・定性的な実態調査に基づいた分析を行うことで、バイオガスの導入が森林資源保全に資する可能性とその課題を明らかにすることを目的としている。 平成21年度は、下記の研究活動を実施し、成果を得た。 1. ネパール政府、国際機関、NGO等によるバイオガス導入支援・成果に関する実態の把握 バイオガス導入に対する政府の方針、支援内容、補助金の条件、補助額、また国際機関やNGOからの支援内容・方針・成果などについて、政府刊行物とインタビュー調査を実施した。政府刊行物や政府機関は、NGOや援助機関による取り組みを把握していない場合が多いため、バイオガス導入支援を実施している国際機関・NGOからは、綿密な聞き取りを行い、調査対象とする候補地域を選定した。 2. 現地調査の準備、プレテスト、本調査の実施 上記1)に基づいて、バイオガス導入から5年以上経過している世帯と、バイオガスを導入していない世帯をランダムに同数選び、薪炭材利用量、生計活動、森林管理に対する意識、森林植生、森林管理体制、地域社会における変化に関する、アンケート調査項目のプレテスト及び本調査を実施した。 3. 定量的な比較分析の実施 現在、バイオガス導入による影響を見出すために、バイオガス導入世帯と非導入世帯において、森林資源利用量や生計活動、生活形態に関する比較分析を実施中である。多変量解析や、2グループ間の差の検定などを分析に用い、平成22年度8月に国際学会において発表を行う予定である。
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