本研究は、過去20年にわたって家庭用バイオガスの導入を推進してきたネパールにおいて、バイオガスの導入が薪炭材利用量、森林植生、森林の管理主体である地域住民の生計活動、森林管理体制、地域社会などに与える影響について、定量的・定性的な実態調査に基づいた分析を行うことで、バイオガスの導入が森林資源保全に資する可能性とその課題を明らかにすることを目的としている。 平成22年度は、下記の研究活動を実施し、成果を得た。 1.現地調査の実施 ネパールの丘陵地域に位置するカブレ郡の6村において、バイオガス装置を導入した262世帯と、導入していない270世帯に対して薪炭材の利用量・回収時間、世帯収入と収入源、農業活動の種類と時間、農産物の販売活動、森林管理活動への参加等について構造化インタビュー技法による実態調査を行った。 2.定量的な比較分析によるバイオガス導入の影響 バイオガス装置の導入世帯と非導入世帯において、森林資源利用量や生計活動、生活形態に関して、比較分析を行った。その結果、導入世帯は、薪炭材の消費量・回収時間、料理時間、化学肥料と農薬の利用量、目や呼吸器の不調が非導入世帯よりも少なく、森林管理に対する高い意識も確認された。したがって、バイオガスの導入が森林資源利用や生計に対する正の効果が示されたといえる。これらの成果について、平成22年度8月に国際森林研究機関連合の第23回国際会議において発表を行った。
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