本研究では、比較ゲノムを利用して栽培作物で単離されている線虫抵抗性遺伝子をマツ属植物で単離し、マツノザイセンチュウ抵抗性との関連性を検証することで、クロマツおよびアカマツにおけるマツノザイセンチュウ抵抗性遺伝子を特定する。本研究は2年間の計画で、以下4つの小研究を遂行することによって、マツ属植物におけるマツノザイセンチュウ抵抗性遺伝子の特定を行う。 1. 「データベースを利用した線虫抵抗性遺伝子の構造解析」(平成21年度) 2. 「プレシーケンスによるマツ属植物における線虫抵抗性遺伝子の単離」(平成21年度) 3. 「抵抗性マツにおける遺伝的変異の検出」(平成21-22年度) 4. 「マツノザイセンチュウと抵抗性遺伝子の関連性を検証」(平成22年度) 平成21年度は、マツ属植物における線虫抵抗性遺伝子の単離(上記1-2)を進め、抵抗性マツにおける遺伝的変異の検出を行った。データベースの利用およびプレシーケンスから単離した線虫抵抗性遺伝子について、クロマツの抵抗性個体と感受性個体間で比較解析を行った結果、抵抗性個体に特異的な変異(SNP)を検出することができ、DNAマーカー化を図った。さらに、試験的にクロマツ抵抗性個体×感受性個体のF1家系(108個体)を利用した抵抗性形質との関連解析を試みた結果、作成したDNAマーカーと抵抗性形質には統計的に優位な関連があることが分かった。これらの結果から、栽培作物で単離されている線虫抵抗性遺伝子がマツ属植物(本年度では少なくともクロマツ)でも存在している可能性を示し、マツノザイセンチュウ抵抗性にも強く関係していることが示唆された。
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